淡々とつづる日記のようななにか
憲法と国際人権

自分で読める憲法の本その2

以前の紹介から大分間があきました。

今回は
内野正幸『憲法解釈の論点[第4版]』

自分で読める憲法の本その1

まだ新学期まで間があるけれど、今日から担当する科目に関連する本をいくつか紹介していくことにする。

今日は渋谷秀樹・赤坂正浩著『憲法1人権』『憲法2統治』(いずれも有斐閣のアルマシリーズ)。

お勧め本その5

今回は今までとは若干違う趣の本を。
三戸祐子『定刻発車 日本の鉄道はなぜ世界で最も正確なのか?』(新潮文庫、2005年)
ISBN4-10-118341-4

日本の鉄道は1分遅れたら「遅延」である。
世界ではこれはかなり考えがたい基準。


高速鉄道が発達しているヨーロッパでさえ10分、20分の遅れは日常である。それがアメリカに行くと1時間、2時間は平気で遅れる。私はこれまで、世界60ヵ国の鉄道を取材してきたが、その中でも極め付きの遅延がメキシコだった。なんと、11時間3分遅れたのだ。しかも驚くべきことに、途中で事故や障害に遭遇したわけではない。始発駅グアダラハラも定刻に発車した。だが、その後は車掌から何ら説明もなく、ただズルズルと遅れたのであった。幸い今日のメキシコで列車は遅れない。いや遅れようがない。長距離列車はこの5年ほどの間に、ことごとく廃止されてしまったからだ。


これは文庫解説を書いている櫻井寛氏の言葉だ(400頁)。
こういった素朴な疑問から出発して、例えば次のようにわかりやすいまとめがなされる。


・・・急激な輸送需要の増加の下で、少ない車両を何回も往復させて、たくさんの貨物や人を運ぼうとすると、列車は定時運転をしなければならなくなる。また、ライバルの交通機関が現れると、鉄道事業者はサービス向上の観点から定時運転に向かわざるを得なくなるというわけだ。(77頁)


といっても、これは基本的にはどこの国もある程度共通しているはずである。本書が説得力を持っているのは、思いも寄らないデータをわかりやすくしめしていること、江戸時代にまでさかのぼってかなり説得的にまとめてあること、鉄道に対して何を求めるのか、といういわば文明論的なとこにまで踏み込んであるのによみやすいことなど、いろいろと挙げることができる。

鉄道に興味がある人もない人も、読み物として面白いし、説得力ある文章とはどんなものか、を意識して読めば学び取れるなかなかの本である。勉強の合間の息抜きとして気軽に手にとって見て欲しい。

お勧め本その4

陳天璽(チン・テンジ/CHEN Tien-shi)『無国籍』(新潮社、2005年)
ISBN4-10-474001-2
外国人問題から研究生活に入った。そのため、この本はタイトルを見たときにすぐに手にとってレジに向かっていた。
データの上ではその存在を知っていたはずの「無国籍者」。

憲法の教科書には、日本国憲法第22条第2項

何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない。


の意味について、通説的見解として、新たな国籍を取ることなく日本の国籍を離脱する自由を含むものではない。現在の国際社会においては、無国籍になる自由はない、といった見解が解かれる。この通説的見解を妥当な見解であると考えるのは今も変わりがない。「国籍」による「日本国」との「紐帯」(むすびつき)を持たなくなったら、普通に日本で生まれ育った人はまずやっていけないと思うからだ。

とはいっても、こういった考えは、ある意味、よけいなおせっかい、である。みずから苦しい状態に身を投じようとする決断を下した人に、なぜわざわざ国家が「やめておきなさい」と説教しなければならないのか。そう考えると、故鵜飼信成(うかい・のぶしげ)氏による、憲法22条は無国籍になる自由も含む、という徹底した説に与したくなる。

本書は、みずから望んで無国籍になった人の話ではない。出生時に、著者の父親が無国籍を選択したのだ。日本と中華人民共和国の間に国交が回復したことをきっかけにしていた。

無国籍者になるということが人にどのような苦悩を与えるのか、それを非常に生々しく見せてくれる。

憲法の授業を受けていても、なかなか抽象的で・・・という人には是非読んで欲しい。

お勧め本その3

宮澤俊義『憲法講話』(岩波新書、1967年)

憲法の入門書としては定評ある一冊。
かなり昔の刊行物だが、全く古びていない(ちなみに手元にあるのは1993年第35刷)。

本書には有名な「はしがき」がある(強調は、原文では縦書きの傍点)。


わたしは、ここで日本の憲法の重要な問題を講話ふうに解明しようとした。講話ふうとは、教壇ふうの意味である。マックス・ウェーバーもいったように、教壇は科学者の語る場所であり、預言者の語る場所ではない。教壇ふうとは、科学的な態度で語ることである。(中略)

わたしは、30年あまり前の著書のはしがきで、次の言葉を引用した。Je n'impose rien, je ne propose rien, j'expose !(わたしは、何もおしつけず、何も提案しない。わたしはただ、解き示す。)これはまさに、ここにいう教壇の態度である。わたしは、imposerし、proposerすることの重要性をじゅうぶん認めるが、exposerすることも、それに劣らず重要だと考えるので、ここでは、もっぱら教壇ふうに語ることにした。(中略)

かんじんなのは、imposerないしproposerとexposerとをかたく区別し、とくに後者のうちに前者をしのびこませないことである。




最初に本書を読んだのは大学生のとき。この「はしがき」には感動した。

内容についてくだくだしく紹介はしない。非常に読みやすい文章で、今に至るまで、ここまでわかりやすい文章を書く法学者、憲法学者はそうはいない。

最後に収録されている「神々の共存」などはいろいろな意味で示唆に富む。

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詳しいプロフィールなどは
大阪産業大学佐藤研究室までどうぞ。

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