三戸祐子『定刻発車 日本の鉄道はなぜ世界で最も正確なのか?』(新潮文庫、2005年)
ISBN4-10-118341-4
日本の鉄道は1分遅れたら「遅延」である。
世界ではこれはかなり考えがたい基準。
高速鉄道が発達しているヨーロッパでさえ10分、20分の遅れは日常である。それがアメリカに行くと1時間、2時間は平気で遅れる。私はこれまで、世界60ヵ国の鉄道を取材してきたが、その中でも極め付きの遅延がメキシコだった。なんと、11時間3分遅れたのだ。しかも驚くべきことに、途中で事故や障害に遭遇したわけではない。始発駅グアダラハラも定刻に発車した。だが、その後は車掌から何ら説明もなく、ただズルズルと遅れたのであった。幸い今日のメキシコで列車は遅れない。いや遅れようがない。長距離列車はこの5年ほどの間に、ことごとく廃止されてしまったからだ。
これは文庫解説を書いている櫻井寛氏の言葉だ(400頁)。
こういった素朴な疑問から出発して、例えば次のようにわかりやすいまとめがなされる。
・・・急激な輸送需要の増加の下で、少ない車両を何回も往復させて、たくさんの貨物や人を運ぼうとすると、列車は定時運転をしなければならなくなる。また、ライバルの交通機関が現れると、鉄道事業者はサービス向上の観点から定時運転に向かわざるを得なくなるというわけだ。(77頁)
といっても、これは基本的にはどこの国もある程度共通しているはずである。本書が説得力を持っているのは、思いも寄らないデータをわかりやすくしめしていること、江戸時代にまでさかのぼってかなり説得的にまとめてあること、鉄道に対して何を求めるのか、といういわば文明論的なとこにまで踏み込んであるのによみやすいことなど、いろいろと挙げることができる。
鉄道に興味がある人もない人も、読み物として面白いし、説得力ある文章とはどんなものか、を意識して読めば学び取れるなかなかの本である。勉強の合間の息抜きとして気軽に手にとって見て欲しい。

